厚底シューズはマラソン初心者ランナーには不向きか?



厚底シューズは、普通のランニングシューズに比べて靴底が厚くなっているものの事です。

大会でプロの選手が履いて新記録をたたき出した頃から流行はじめ、その後日本の選手も愛用するようになりました。

元々の厚底シューズは普通のシューズに比べて重さがあったため、走行の際に足に負担がかかってしまうと言われていましたが、最近は軽量のものが出てきているので、使用頻度はどんどん上がっています。

しかし、厚底シューズを使用した選手がどんどん記録を塗り替えている為か、世界陸連が「厚底シューズの使用を禁止するか検討している」というニュースが流れました。

それほどまでに走行速度に影響している厚底シューズはどういうものなのか。実際に禁止されたのかなどをまとめて紹介します。

厚底シューズは本当に良いのか、その効果は?

ナイキが発売したヴェイパーフライは、正式名称を「ZOOM VAPORFRY 4%」と言います。

このナイキの厚底シューズですが、プロトタイプなども使用した実際の研究では、31分間で10㎞(1マイルあたり約5分程度ペース)を走ってもらうというものを行いました。

テスト自体は3日間行われましたが、ランニング時のエネルギー消費量を4%減らし、走行速度を3.4%向上させることができるという結果になりました。

つまり、厚底シューズを使用すると、速く走れるようになるのです。

では、なぜここまでの効果が得られるのかというと、その秘密はクッション性とカーボンプレートにあります。

ナイキの厚底シューズには、最も厚い部分で約4㎝程のソールが使われています。

ソールは、大きなスプーン状のカーボンファイバー製プレートを特殊素材で挟むような3層構造になっています。

ソールにカーボンプレートが使用されていないとただ柔らかいだけの素材ですが、カーボンが使用されているので反発が良く、ほどよくクッションになってくれます。

また、カーボンが屈曲するのに耐えられるようになっています。

厚底シューズ使用禁止問題

2020年1月17日、「厚底シューズが陸上選手に対して不公平なアドバンテージを与えている」として、国際陸上競技連盟は厚底シューズの禁止を検討しているというニュースが流れました。

このニュースは日本でも取り上げられ、注目を集めました。

問題となったのはナイキの厚底シューズで、ソールにカーボンプレートを使用して反発性を高めているため、「不公平なサポートや利益」にあたるという指摘をうけました。

世界陸連、厚底シューズを容認

厚底シューズが使用禁止になるかならないかという議論がずっとされてきましたが、結果として世界陸連は厚底シューズの使用を容認する形で決着となりました。

しかし、全ての厚底シューズを容認するわけではなく、新しくルールを設けることになりました。

そのルールが以下になります。

新ルール
・4ヵ月以上市販されている商品であること
・外見の変更 特注品の使用不可
・靴底の厚さは40mm以下
・埋め込みプレートは素材を問わず1枚まで

このルールが適用されるのは、4月30日からになります。

現状ナイキの厚底シューズはこの条件をクリアしているので、使用することができます。

厚底シューズのメリットとデメリット

最近は厚底シューズを履いて走るランナーが増えてきました。

以前開催されたMGCでは、代表選手の半分以上が厚底シューズを使用していました。

そこで気になるのは、厚底シューズを使用するメリットやデメリットです。

では、厚底シューズのメリットやデメリットを紹介していきます。

是非参考にしてみてください。

厚底シューズを履くメリット

厚底シューズを履くメリットは以下のものが挙げられます。

厚底シューズのメリット
・クッション性が高く、足が疲れにくい
・クッション性のおかげで膝に負担がかかりにく
・重すぎず、足運びが楽
・身長が高くなるので、ストライドが伸びるようになる

クッション性が高く、足が疲れにくく膝に負担がかかりにくい

厚底シューズは、薄底に比べて靴底が肉厚になるので、クッション性が高いです。

その為、体重をかけた時にクッションが体重を分散してくれるので、膝に負荷がかからなくなり、けがをしづらくなります。
※但し、筋力やフォームが確立されていない初心者には、怪我のリスクが高くなる可能性があります。

また、無駄な力を入れる必要がなくなるので、足が疲れにくく、長時間走り続けることができます。

重すぎず足運びが楽

物にもよりますが、現在主流になっているナイキの厚底シューズは片足180グラム程度なので、比較的軽いです。

その為、履いている感覚が少なく、足運びが非常に楽です。

長時間履いていても靴の重さを感じにくいので、走るのも苦になりません。

身長が高くなるので、ストライドが伸びるようになる

厚底シューズの大きな利点の一つに「身長が伸びることでストライドが大きくなること」があります。

ストライドというのは、歩幅の事です。

身長が伸びることで走った時のストライドも伸びるようになります。単純なことですが、これが結構大事です。

「ストライドが伸びると速く走れるようになるのか」という疑問が出てくると思いますが、今よりは伸びるようになります。

走り方にはピッチ走法とストライド走法の2種類があります。

ピッチとは、1秒にかかる時間の事で、初心者ランナーの場合は、1分間に約160~180回程度足を蹴り出すと言われますが、プロの場合は200回をこえまます。

つまり、ピッチ走法とは歩幅を短くして足の蹴り出しを速くする走法の事なのです。

対してストライド走法とは、歩幅を大きくして走る走法の事です。

ストライド走法は、足の回転で走るわけではないので、ピッチ走法に比べると遅くなり、歩数は少なくなります。

しかし、歩幅を広くすることで体を前に出しやすくなるので、単純にスピードが出しやすくなります。

歩幅は身長によってある程度決まってしまうのですが、身長が高くなると歩幅も高くなります。

そういう意味では厚底シューズを使うことで歩幅を広げることができるので、単純にその分速く走れるようになるのです。

厚底シューズを履くデメリット

デメリットは、以下のようなものが挙げられると思います。

厚底シューズのデメリット
・普通のシューズに比べたら少しだけ重い
・耐久性が少ない
・初心者がジョギングや街をランニングするのには向かない

普通のシューズに比べたら少しだけ重い

メリットの項目で「軽い」と書きましたが、それでも普通のシューズと比べると重い方です。

普通の薄底シューズが平均140グラムなのに対してナイキの厚底シューズは平均180グラム程度になります。

慣れれば問題ないレベルですが、超軽量のシューズと比べてしまうとやはり重い方です。

耐久性が少ない

厚底シューズの耐久性は、一般的な250マイル、約400㎞レースでの使用が限界とされています。

そして、約300㎞程度走ると機能が落ちると言われています。

なので、長期間使うシューズにはあまり向いていません。

初心者がジョギングや街をランニングするのには向かない

耐久性に関係する部分でもありますが、ジョギングや街をランニングするのには向いていません。

ジョギングは、そもそもゆっくりと走るものなので、ストライドを上げる必要はないので、厚底シューズを履く意味がほとんどありません。

また、ジョギングはソールを削ってしまうような走り方をするので、すぐに劣化してしまいます。

厚底シューズは、それを履くための筋力や走り方を鍛え上げた熟練者でないと逆に怪我をしてしまう恐れがありますので、フルマラソンを3時間切るようなトップランナーが履くのに適したシューズと言えるでしょう。

 

厚底シューズは初心者のランナーでも履きこなすことはできるのか

実際にプロのランナーが結果を残している厚底シューズですが、そこまでの効果があるなら一般ランナーでも効果はあるのか?履きこなすことはできるか?と、誰しもが思うところです。

トップレベルのマラソンランナーには恩恵があることはわかってきました。しかし、厚底シューズは初心者ランナーには不向きかもしれません。

フルマラソンを初めて走る人やゆっくりとジョギングを楽しもうという人は今流行の厚底ではなく自分に合った初心者用のシューズをお薦めします。

なぜかと言うと、厚底シューズを履きこなすにはそれに見合った筋力やランニングフォームの確立が必要なんです。

一般の人でもある程度鍛えてスピードを出して走る人には効果が期待できると思います。現状の研究データからは4分/km(15km/h)ペースで走れる人には効果があるとされています。

参考文献:https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs40279-017-0840-x

このペースはフルマラソンを3時間を切るようなペースです。一般の人でもこういう人はたくさんいらっしゃいますが相当速く走れる人です。

そういう人は相当鍛えている人で筋力やランニングフォームを会得しています。いわゆる上級者向きに作られたシューズと言えます。

よって初心者でフルマラソンを5時間くらいかけて走る人には不向きと言えるかもしれません。しっかり鍛えていないとケガのリスクもあるでしょう。

マラソン初心者ランナーは膝や足首を痛めない身体にやさしい初心者用のランニングシューズを選ぶことをオススメします!

 

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